Mit-PFN Energy、深層学習技術を用いた地下構造解析AIシステムの開発でPGSと合意
開発成果を物理探査分野の国際学会で発表
2021.10.27
株式会社Preferred Networks(以下、PFN)と三井物産株式会社(以下、三井物産)の合弁会社であるMit-PFN Energy株式会社からの発表です。
Mit-PFN Energy株式会社(以下、MPE)は、ノルウェーのPGS ASA (本社:オスロ、社長 最高経営責任者:Rune Olav Pedersen、以下、PGS)と、深層学習技術を用いた地下構造解析/解釈AIシステムの開発及び事業化を目指す覚書を締結し、PGSが保有する実データを使った地下構造の推定技術の研究開発を開始します。
PGSはエネルギー事業(石油・ガス、洋上風力等の再生可能エネルギー等)や二酸化炭素の地下貯留(CCS:carbon capture and storage)などの低炭素化事業において、海底地下データの収集から解析まで広範なサービスを提供する資源探査業界最大手の一社です。MPEは、物理探査から地層解析に関する専門的なデータ処理知識を有するPGSとの連携により、地下構造解析/解釈AIシステムの研究開発を行い、地震探査データ処理時間の短縮によるエネルギー資源開発事業の効率化を目指します。こうした効率化により、エネルギー事業分野における収益性の向上が期待されます。
MPEは、三井物産がエネルギー業界で蓄積してきた知見やノウハウとPFNの深層学習/AI技術を掛け合わせ、従来から石油・天然ガス資源開発で用いられる地震波(人工的に発生させる弾性波)の解析に深層学習技術を活用し、深層学習モデルによる地下構造の解析・推定技術の開発を進めてきました。研究では、自動生成した地下構造データを元に、PFNが所有するスーパーコンピュータMN-2で地震波の大規模シミュレーションを実施し、そのアウトプットデータを学習した深層学習モデルによって地下構造の解析・推定を行っています。その成果の一部は、2021年10月に開催された物理探査分野の国際学会「第82回 EAGE ANNUAL」で発表しました*。
詳しくはブログをご覧ください: https://tech.preferred.jp/ja/blog/mitpfn-eage-annual/
図: 地下構造の解析結果*。先行研究で広く用いられているMarmousiモデルと呼ばれる地下速度構造(図a)に対し、その地震波シミュレーションデータからP波速度構造を推定(逆解析)する実験を行った。提案手法はResNet50モデルを基礎として、さらにOptunaを用いたニューラルアーキテクチャの最適化も行うことで、P波速度構造をきわめて正確に推定できた(図b–e)。
MPEとPGSの協業は、石油・ガスなどの地下資源開発分野への活用に加え、将来的にはCCSなどの低炭素化事業、再生可能エネルギー分野等への応用を視野に入れたAIシステムの開発・事業化を一歩前進させるものです。
MPEは、既存エネルギー事業の効率化と気候変動への対応等、現代のエネルギー問題を解決するAI技術を用いた高付加価値ビジネスモデル事業の創出に挑み続けます。
* T. Shibayama, N. Mizuno, H. Kusano, A. Kinoshita, M. Minegishi, R. Sakamoto, K. Hasegawa, and F. Kachi. Practical deep learning inversion using neural architecture search and a flexible training dataset generator. 82nd EAGE Annual Conference & Exhibition, October 2021. https://www.earthdoc.org/content/papers/10.3997/2214-4609.202112777