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花王とPFN、「仮想人体生成モデル」を共同開発

一部のデータから、健康や生活などに関する1,600項目以上のデータが推定できる統計モデルの検証を開始

2022.02.28

花王株式会社(社長:長谷部佳宏、以下、花王)と株式会社Preferred Networks(最高経営責任者:西川徹、プリファードネットワークス、以下、PFN)は、このたび、「仮想人体生成モデル」のプロトタイプを共同開発しました。今後は、協業する複数の事業者とともに、本モデルの実用化に向けた検証を行います。
さらに、花王はPFNの協力のもと、本モデルをAPI*1経由で提供する、新規デジタルプラットフォーム事業の開始に向けて準備を進めます。

仮想人体生成モデルとは

「仮想人体生成モデル」は、健康診断などで得られる身体に関する項目から、ライフスタイル(食事、運動、睡眠など)や性格傾向、嗜好性、ストレス状態、月経などの日常生活において関心の高い項目まで、幅広く多種多様な1,600以上の項目を網羅的に備え、これらがどのようなパターンで現れるのかを示すことができる統計モデル*2です(図1)。ある項目のデータを入力すると、別の項目の推定データを出力することが可能です。入出力する項目は、備えられたすべての項目から自由に設定することができます。

仮想人体生成モデルが備える1,600以上の項目図1 「仮想人体生成モデル」が備える幅広く多種多様な項目の例

本モデルの開発にあたり、数十から数百項目の雑多なデータセットを複数組み合わせ、ひとつの巨大なデータセットとして訓練を行いました。このアプローチはデータセット間の質の異なりや巨大な欠損部分の取り扱いが課題となりますが、PFNが独自の試行錯誤を重ねた結果、一定の予測精度を保ったまま、今までにない多種多様な項目の推定が可能になりました。

一人ひとりに合った最適なライフケアの実現をめざして

人生100年時代と言われる中、自分らしい生活を長く送るためには、身体的に健康であるだけでなく、生活全般の質も良好に保たれていることが必要です。そのために花王とPFNは、自分自身の身体や健康、さらにライフスタイルや性格傾向、嗜好性なども併せてより精緻に把握し、いま何に対処するべきかを知って的確に対応する、一人ひとりに合った最適なライフケアが重要であると考えています。

しかし、一人でこれらすべての情報を網羅的にかつ精緻に把握することは、身体的・心理的・金銭的・時間的な負担が大きく、また、適切なソリューションを導き出すことも非常に困難です。

そこで、人の身体や心理、生活など、多岐にわたって長年研究し、数多くの研究資産を持つ花王と、深層学習などの最先端の計算科学技術を有するPFNが協業し、「仮想人体生成モデル」の構築を進めてきました(図2)。本モデルは、花王が中期経営計画「K25」で示す「デジタル・ライフ・プラットフォーム」を構成する重要な機能のひとつと位置づけています。

花王とPFNが行う「仮想人体生成モデル」の構築に向けた取り組み図2 花王とPFNが行う「仮想人体生成モデル」の構築に向けた取り組み

仮想人体生成モデルの活用法

本モデルは、花王がPFNの協力のもと、協業する事業者や研究機関などにAPI経由で提供し、各事業者がエンドユーザーに対してさまざまな価値創造や提案をする際に活用すること(図3)や、各研究機関が仮説構築の際に使うことなどを想定しています*3

なお、本モデルを使って推定する際に入出力したデータを、花王およびPFNが収集・蓄積し、二次利用することはありません。また、個人情報の入力も必要ありません。

花王とPFNが行なう「仮想人体生成モデル」の構築に向けた取り組み図3 「仮想人体生成モデル」のアプリケーション開発事業者による活用イメージ

本モデルの活用例を以下に示します。これらの活用例に限定されることなく、協業する事業者が本モデルのユニークな活用法を見いだし、新たなイノベーションを創出することを支援していきます。

例1:内臓脂肪へのアプローチ

内臓脂肪量の測定には、通常はコンピューター断層撮影(CT)検査が必要ですが、健康診断結果など手元にあるデータから、内臓脂肪量を統計的に推定できます。さらに、内臓脂肪量以外のさまざまなデータと組み合わせることで、その人のライフスタイルや運動・食事習慣などに合わせた最適なソリューション提案につなげることも期待できます。

例2:仮定に基づくシナリオ検討

仮定のデータを入力することで、さまざまなシナリオを検討できます。例えば、現在の状態からもし2kg体重が少なかったと仮定すると、どの項目がどの程度異なるかを推定できます。それぞれの人に適した健康目標の策定などに活用することも考えられます。

今後の取り組みについて

現在、本モデルのプロトタイプが完成し、協業する複数の事業者と本モデルの活用について、2022年中の実用化を目標に検証を進めています。さらに、花王はPFNの協力のもと、2023年初頭を目標に本モデルをAPI経由で提供する、新規デジタルプラットフォーム事業の開始をめざします。

将来的には、より多くの事業者と協業し、本モデルを活用したさまざまなライフケア・ソリューションの提供を支援する事業として成長させることで、多くの人々が健康で充実した生活を送ることができるように貢献していきます。

丸山宏 (東京大学人工物工学研究センター 特任教授 / 花王株式会社 エグゼクティブ・フェロー / 株式会社Preferred Networks PFNフェロー) のコメント

「仮想人体生成モデル」は、花王が持つ人の身体や生活に関する幅広い知見と、PFNが持つ深層学習や生成モデルの高度な技術を組み合わせたことによって初めて可能になった、さまざまな可能性を秘めた汎用の統計モデルです。いくつかの活用例を提示しましたが、「仮想人体生成モデル」のおもしろい使い方は、これからどんどん出てくると思います。そのようなアイディアを持つ方々とのコラボレーションを楽しみにしています。

*1 「Application Programming Interface」の略称で、ソフトウェアの機能を外部に向けて公開することにより、他のアプリケーションと連携できるようにする仕組み
*2 データから相関関係などの統計情報を抽出し、それをもとに推論を行うシステムの一種
*3 本モデルは医療機器プログラムではありません。疾病の診断や予防を目的としたものではなく、健康の維持や増進のための行動変容につながるきっかけを提供するなどの活用を想定しています。

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