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PFN、深層学習用プロセッサーMN-Coreを Matlantisの深層学習モデル(PFP)の計算基盤として実装

実際のワークロードで安定して3倍程度の高速化を確認

2023.10.16

株式会社Preferred Networks(本社:東京都千代田区、代表取締役 最高経営責任者:西川徹、以下、PFN)は、神戸大学と共同開発した深層学習を高速化するプロセッサーMN-Core™を、汎用原子レベルシミュレータMatlantis™の深層学習モデル(PFP*1)の計算基盤として実装し、Matlantisの販売をおこなう株式会社Preferred Computational Chemistry*2(以下、PFCC)を通じてENEOS株式会社(以下、ENEOS)に提供を開始しました。

PFNは、MN-Coreを搭載したスーパーコンピュータMN-3を2020年に稼働させ、膨大な計算力を必要とする深層学習の計算速度の高速化を進めてきました。PFNが事業として取組む深層学習の実用的なワークロードにおいてMN-Coreの性能評価を行った結果、GPUを搭載したPFNのスーパーコンピュータMN-2と比較して、三次元モデル復元で10倍以上、画像認識モデル自動最適化で7倍以上の高速化を確認しています。これらの性能評価に加え、専用ソフトウェアスタックの開発も進捗したことから、これまで社内の研究開発利用に制限していたMN-Coreを、Matlantisのコア技術である深層学習モデルの計算基盤として実装しました。MN-Coreを計算基盤とするMatlantisは、2023年8月からクラウド経由でENEOSに提供され、分子動力学計算を使った密度・粘度・熱伝導・比熱などの物性データ生成などの実際のワークロードで安定して3倍程度高速化されるなどの有用性が確認されています。

Matlantisは、材料探索の多様なワークロードに柔軟に対応するため、複数種のGPUなどを組み合わせたシステムを構築しています。MN-CoreをMatlantisの計算基盤として使用することにより、PFNはハードウェアから深層学習アーキテクチャまで高度にチューニングを行い、材料探索シミュレーションに最適化した計算資源を安定的に提供していきます。また、MN-CoreによるMatlantisの高速化で、これまで以上に現実世界に即した複雑な材料探索シミュレーションが可能になります。

PFNは、深層学習を高速化する計算基盤としてMN-Coreおよび後継機のMN-Core 2の開発を進め、今後クラウド提供を拡大していきます。

なお、MN-Coreシリーズは、深層学習向けに最適化された設計思想や省電力性能が高く評価され、2023年10月17日(火)~20日(金)に幕張メッセで開催されるCEATEC Japanにおいて「アドバンステクロノロジー部門 準グランプリ」を受賞しました。PFNブース(A121)にて、MN-Coreサーバーを使って材料探索をリアルタイムで行うデモと、後継機のMN-Core 2を展示するほか、今後のMN-Coreシリーズの開発ロードマップを2023年10月18日(水)14:00~15:00の西川徹の講演(A024)にて発表予定です。

CEATEC Japan

Preferred Networksブース

会期: 2023年10月17日(火)~20日(金)
会場: 幕張メッセ 展示ホール8 ブースA121(アドバンスドテクノロジーエリア)
展示概要: 大規模言語モデルや基盤モデルと連携したPFNプロダクトのデモをお見せするとともに、ブース内の特設ステージにて今後の技術進化に関するブースセッションを行います。また、これらのAIモデルの学習を高速化する、電力効率で世界最高水準のAIプロセッサーMN-Core™のサーバー(実機)による材料探索のデモおよび最新世代のMN‐Core 2プロセッサーを展示します。


MN-Coreサーバーを使った材料探索のデモ


MN-Core 2

講演

日時: 10月18日(水)14:00~15:00
会場: 幕張メッセ 国際会議場 コンベンションホールA
講演者: 株式会社Preferred Networks 代表取締役 最高経営責任者 西川 徹
講演概要: 「現実世界を理解し、イノベーションを生み出すAI」(A024)
生成AIなどの新しいAIを真に実用化していくために、どのように課題を解き、イノベーションを生み出していくのか、そのアプローチをご紹介します。

講演の詳細・お申込み:https://www.ceatec.com/ja/conference/detail.html?id=2261

※CEATEC CONFERENCEへのご参加は無料の来場登録と聴講予約が必要です

MN-Core™シリーズについて
MN-Coreシリーズは、深層学習の特徴である「行列演算」に最適化した専用チップで、PFNが神戸大学の牧野教授グループと共同開発しました。チップの演算器数を最大化するため、ネットワーク制御回路やキャッシュコントローラ、命令スケジューラなどの機能を内包せず、コンパイラにその機能を持たせて最小限の機能に特化することで、コストを抑えながら、深層学習における実効性能を高めています。MN-Coreを搭載して2020年に稼働したPFNのスーパーコンピュータMN-3は、2020年6月から2021年11月までに、スーパーコンピュータの省電力性能ランキングGreen500で3度世界1位を獲得しています。

Matlantis™について https://matlantis.com/ja/
Matlantisは、原子スケールで材料の挙動を再現して大規模な材料探索を行うことのできる汎用原子レベルシミュレータとして、PFNとENEOSが共同開発しました。従来の物理シミュレータに深層学習モデルを組み込むことで、計算スピードを従来の数万倍に高速化するとともに、領域を限定しない様々な物質への適用を可能にしました。両社の合弁会社であり、Matlantisの販売を行うPFCCが、2021年7月にクラウドサービスとして提供を開始してから、2023年10月時点で、70以上の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料など、幅広い開発に用いられています。マテリアルズ・インフォマティクスのコアツールとなるMatlantisは、様々な材料開発分野において革新的な素材の開発を加速させ、イノベーション創出・実現に貢献していきます。

*1:PFNとENEOSが共同開発した、材料探索のための汎用的な原子シミュレーションを実現する深層学習技術であるNeural Network Potential (NNP)の名前。NNPとは、ニューラルネットワークを用いて分子動力学ポテンシャルを表現するもの。S. Takamoto, et al. Nat Commun 13, 2991 (2022). doi: 10.1038/s41467-022-30687-9

*2:PFNとENEOSの共同出資により2021年6月1日に設立。汎用性原子レベルシミュレーションクラウドサービスMatlantisの販売及びコンサルティングを提供

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