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林 亮秀

リサーチャー

材料リサーチャー

※本記事は2023年10月に取材したものです。サービス名称や所属は取材当時の内容です。

自己紹介をお願いします

2021年に新卒で入社した林亮秀です。理学研究科 化学専攻 博士後期課程修了で、大学院では量子化学を専門としており、触媒に関する反応経路を密度汎関数理論(DFT)を用いて解析したり、特定の触媒反応に対する機械学習ポテンシャルの作成と自由エネルギー解析に取り組んだりしました。また、2019年にPFNインターンで機械学習ポテンシャルに関わるテーマに取り組み、その後PFNに入社してからはMatlantisや機械学習技術を使って触媒探索を行うために必要な理論やコードを作っています。

 

現在担当している主な業務内容や具体的な流れについて教えてください

全体としては約30人のメンバーから成る大所帯で材料探索にまつわる研究開発を行なっています。特に「Matlantis」というプロダクトの開発と活用が活動の主軸になっています。

Matlantisに関連するチームは主に三つあります。「Service-devチーム」はフロントエンドやサービス運用に関するエンジニアリングを担当し、「Core-devチーム」はMatlantisのコアである機械学習ポテンシャルを製品に搭載するように開発したり、それを用いた材料探索ライブラリの開発を手がけます。私が所属する「Researchチーム」では、機械学習ポテンシャルの研究開発をしたり、Matlantisを利用してクライアントと一緒に具体的な材料探索を行ったりすることもある他、その経験から得られた知見を活かして需要を予測して、新技術の研究開発を進行することもあります。

最新の技術を取り入れて材料の探索を加速することが重視されており、最新の理論に積極的にキャッチアップし、それを材料探索に適用することが推奨されています。例えば、私は生成モデルの一つである拡散モデルを用いた研究を行なっています。別の同僚は、LLMを用いた研究を行っています。私たちは、新しい機械学習技術を使う研究しかしていないということもなく、必要であればやや古い理論の改善も行います。私もNudged Elastic Band(NEB)というやや古い理論の改良をしたことがあります。また、遺伝的アルゴリズムを用いた材料探索技術の改善をしている人もいます。

Researchチームでは一つの目標に向けて大集団でコードを書くよりも、少人数で自ら設定した目標を追求することに時間を使うことが多いです。この理由の一つに、未知の分野では研究者が自身の信念を持ち、あらゆる障壁を乗り越えることで初めて良い研究結果が生まれるという側面があるかなと思います。しかし、あらゆることを個人で問題設定して解決するというわけではなく、最新情報の共有や大まかな意思決定、困難な問題の解決法などに色々なバックグラウンドを持つチームメンバーが助言をくれ、一人では決して出せなかったような成果を出すことが出来ます。加えて、他のチームとも積極的に連携しています。これにより、MN-CorePFVMといったコンピューターサイエンスの最先端技術を活用した製品提供ができ、日々刺激的な環境で業務を行っています。

 

入社してから現在まで PFN で成長したと感じることはありますか?

技術的な成長は常にし続けています。時間を自由に使うことができるので、効率の良いタイミングで論文を読んだり実験をしたりすることが出来、最先端の技術に関する知見がどんどん溜まっています。情報収集の得意なチームメンバーや最高研究責任者の岡野原が重要な論文を教えてくれるという特殊な環境になっていて、一人ではなかなかキャッチアップしきれない最新の情報に置いていかれないという安心感があります。自分の取り組みについてもチームメンバや共同研究先の方から意見をもらうことが出来、おかしな方向性の実験に時間を消費してしまうというリスクを気にかけることなく全力で取り組むことが出来ます。

研究以外の面では、入社してからITの基礎的な技術への理解度が非常に高まりました。大量の計算資源を運用する中で、データベースやKubernetes、通信のAPIのような大学院ではほとんど触れることがなかった技術をどんどん知ることが出来て人生の幅が広がりました。

企業から開発費を頂いて共同研究を行うことは新たな経験として特に印象深かったです。入社直後から共同研究に参加し、社外の人々と協力して仕事をすることになったのですが、始めるまでは経験不足を感じ、自分よりももっと適任な人がいるだろうと思っていました。しかしいざ始めてみると自分の知識が生きることが多く、新たな挑戦によりある程度自分でも対応が可能だと思いました。

PFNはすごいエンジニアがたくさんいると聞いていたので、PFNのインターンに申し込んでみるまではこんな会社に入ってもすごい人しかいないだろうし自分の仕事なんかないだろうと思っていました。しかし実際に入ってみたら人の数より進めたい技術の数の方が多いので、思ったより自分の仕事はたくさんあったし、その仕事でも周りの人たちに助けてもらってどんどん成長できて貢献できていると思います。

大学までの経験が業務に生かされていると感じることはありますか?

すべての人に当てはまるわけではないかもしれませんが、私の場合は大学や大学院での経験は大変有用な形で業務に生かされています。今のところの研究活動において最も活きている知識は有機化学と熱力学の知識だと思っています。そこに趣味でやっていたアルゴリズムやプログラミングの知識を添えて今の仕事をしています。私が学生の頃、一般に量子化学での就職は難しいと言われていたので、大学院までの分野を捨てて好きだったプログラミングで生きていくということも視野に入れていました。しかし蓋を開けてみれば今は大学院での研究の続きのようなことをしていて、むしろ、大学院時代の自分が苦しんでいたことを解決して全ての人が楽に使えるようにするような仕事をしています。元々、大学院時代に使っていた理論(DFTによる反応経路探索)は一週間単位で計算をさせて失敗したらやり直しというスパンの長いトライ&エラーをしていて不便を感じていました。今ではそれがMatlantisによって数十分でできるようになり、トライ&エラーの負担も軽くなったという飛躍的な進歩をしています。今ではそれでもなお足りない部分をどんどん便利にするようなものを作ることが出来ていて非常に楽しいです。

最後にメッセージをお願いします

材料探索チームでは新しいメンバーを募集しています。今、計算化学は材料探索を加速する重要な技術になりつつあると思います。この分野で取り組むべき課題は星の数ほどあります。計算化学のこれからの未来を作りたい人、材料探索に興味のある人が応募してくださるととても嬉しいです。

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