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Vol.17 AIによる研究の生産性向上

◆ AIツールの導入で40%多くの材料候補が見つかる

最近読んだ論文で面白かったやつで、私もツイートしたらめちゃくちゃ引用されてたんですが、材料候補をAIで生成するツールを使った際にどれくらい生産性が向上するのかというような例を研究した論文がMIT者より出されていました。

この研究は、サイエンスの研究者じゃなくて経済とか経営の研究をやっている方が、どこかの企業に入り込ませてもらって、ずっといろんなデータを取って調べていたと思います。

ここでは何をやったかというと、大きな米国企業で1000人ぐらい材料研究をしている研究者がいて、そこでAIを使って材料候補を生成するというツールを使いました。AIツールの導入以前、導入以後あわせて5年間ぐらいのプロジェクトです。

そこで分かった事実として、(グラフの)横軸が月で、縦軸がどれだけ新しい材料を発見したか(発見前を0%と補正)というものですが、導入して以降、大体6ヶ月後ぐらいから44%多くの材料を見つけるようになって、特許申請も40%増加するようになったというような、かなり劇的な効果が出たというふうに報告して、海外でも話題になっていました。1000人規模の組織でアウトプットが40%改善ってすごいことですよね。

◆ AI導入によって生産性の格差は拡大する

一方で、他にも面白い話がありまして、実際にどう改善したか人別にみてみると、元々の生産性が下位3分の1の研究者に改善は見られず、トップ研究者の成果が倍増したということが分かりました。

もともと生産性が低かった人、もしくはスキルが低かった人はAIを導入した後もあまり生産性が上がらなくて、一方で、もともと生産性がトップ10%とかに入る人っていうのは、生産性が8割ぐらい増えているというのが分かった。

どうやらAIが出した材料候補を、トップの人は「このままもうちょっと深掘りしたら良さそうだな」「これはだめだな」っていうのが分かるし、そうじゃない人だと見分けがつかないので、良くない候補に時間を割いてしまって結局あんまり変わらない、ということになっていたというのがあります。AIはよくドメイン知識を補完するという話がありましたが、生産性の差っていうのがむしろ増えたのが起きていた。

今回のツールは、アイデア生成のタスクを自動化したんですけれども、AI導入前は時間の4割を材料こんなのがいいかなっていうようなアイデア生成に費やしていたんですが、これがほぼ10%ぐらいまで減っちゃって、代わりに、出てきた候補材料を判断するタスクの時間が40%まで増加した。

◆ 研究活動は楽しくなくなった?

一方で、研究者の満足度は生産性の向上とか関係なしに44%低下した。つまらなくなった、満足度が減ったと。

これは創造的な仕事が減って日常業務がルーチン化したためっていうことと、あとはやっぱり自分の専門知識が活用されてないなっていう感じで、満足度が減っちゃったっていうのがありました。

ただ、「AIが生産性向上に実際に寄与してるな」という信念が強化されて、みんなAI勉強しないとやばいねっていうような危機感が芽生えて、スキル習得の意欲が高まったというのはあります。

この結果をどう見るかっていうのはこれ一つだけ見てもわからなくて、他にもいろいろ考えなきゃいけないんですけども、実際こういうことは今後しばらく起きると思います。

まず、AIを使っても、もちろんほとんどの仕事は完璧にできない。AIが補助するっていうことなので、生産性の差がさらに出てくるっていうことはありえると。

あとはやっぱり満足度が下がっちゃうと、会社としては短期的にはいいかもしれないけど、結果としてこういうツールを使うのが広まらなかったりしちゃう問題があるので、こういうのをどうやって改善できるのかなっていうのは結構大きな課題かなと思いました。

なおこの研究自体は有名な研究室から出ていますが、その後、いろんな批判的な意見も出て、本当にそれだけの貢献があったのかといった意見も出てるんで、50%ぐらいの感じで見といてもらえたらなと思います。

◆ AIを活用した研究活動

この他にもAIをサーベイに活用したり、調査に活用したり、論文を書かせたり、プレゼンを作らせたりとして研究開発を加速することは可能になってきていると思います。

実際、研究活動の大半は本質的ではないところに時間やリソースが割かれていることが多くあるかと思います。そうした部分をAIによってどれだけ効率化できるか、またはAIによってこれまでできなかった規模にスケールできるかといった部分でアイディアが問われていると思います。

計算機が登場する以前、インターネットが登場する以前の研究の進め方はもちろん違ったわけです。それと同様にAIが登場した場合にはそれにあわせた研究の進め方がでてくる、うまく使いこなした人は、これまでよりもずっと競争力のあるような研究ができるといったことができてくると考えられます。

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