PFN、トヨタ未来創生センターとAI半導体MN-Core Lシリーズを活用したフィジカルAIの高速化に関する共同研究を開始
超高帯域幅メモリのMN-Core Lシリーズをオンプレミス環境の高速推論が求められるロボットで検証
株式会社Preferred Networks(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岡野原 大輔、以下PFN)は、このたび、トヨタ自動車株式会社の研究組織である未来創生センター(本社:愛知県豊田市、未来創生センター長:古賀 伸彦、以下トヨタ未来創生センター)と、大規模データを活用したフィジカルAIの研究開発において、PFNが開発中の推論向けAI半導体 MN-Core™ Lシリーズを用いた推論処理の高速化に関する共同研究を開始しました。
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本合意のもと、PFNはMN-Core Lシリーズに必要なソフトウェアを提供し、トヨタ未来創生センターは実環境の課題解決をめざし、ロボットに求められる推論処理を同シリーズで高速化する研究を進めます。2027年のMN-Core Lシリーズの出荷後には、ロボットを実環境で動かして検証し、研究結果を2027年中に随時公開する予定です。
トヨタ未来創生センターは、トヨタ自動車の本業であるモビリティ開発から一線を画した将来技術の研究を実施しています。具体的には、2012年に発表した生活支援ロボットHSRを用いて、遠隔操作の実証実験や、多様な環境で収集したロボットの動作データの大規模学習を進めています。さらに、多様なタスクに汎用的に適応できるロボット制御モデル「ロボット基盤モデル」の共創研究にも取り組んでいます。ロボット基盤モデルをリアルタイムで動かすには、オンプレミス環境での生成AIの高速な推論処理が不可欠です。将来的には、ロボット内部にAI半導体を組み込み、エッジで効率的な推論処理を行うことが求められます。
PFNのMN-Core Lシリーズは、従来品よりも高速かつ低消費電力で生成AIの推論処理ができるように設計された新しいアーキテクチャのAI半導体で、初期モデルとなるMN-Core L1100(省電力版)およびMN-Core L1400(高性能版)を2027年に発売予定です。生成AIの推論(入力を受け取り生成結果を出力するプロセス)ではメモリの帯域幅がボトルネックとなっていますが、MN-Core Lシリーズはその解消を目指したAI半導体で、最新機種であるMN-Core 2の50倍以上の帯域幅を目標に開発しています。
MN-Core Lシリーズは、現在生成AIの推論に広く用いられているGDDR(graphics double data rate)メモリやHBM(high-bandwidth memory)を用いた画像処理装置(GPU: graphic processing unit)と異なり、比較的安価で大容量のDRAM(dynamic random- access memory)とPFN独自のMN-Coreアーキテクチャを持つロジック半導体を垂直に積層することで、HBMを超える高帯域幅のメモリによる高速な推論を可能にします。また、近年注目を集めるSRAM(static random-access memory)を主に用いたAI半導体よりもメモリ容量が大きいため、大規模なシステム構成を必要としません。たとえば、広く利用されている700億パラメータの大規模言語モデル(LLM)の場合、推論に必要なメモリ帯域幅とメモリ容量をMN-Core L1400のカード1枚でまかなえるように設計されています。
GPUと比較したMN-Core Lシリーズの構造と特長
GPU+DRAM

GPU+HBM

MN-Core L Series

トヨタ自動車株式会社 未来創生センター Rフロンティア部 尾藤 浩司主査のコメント:
ロボットは実環境で動作するため、フィジカルAIにはリアルタイム性の高い応答が不可欠です。今後、ますます大規模化・複雑化することが予想される中、AI半導体とAIアルゴリズムの協調設計はきわめて重要です。生成AIの推論処理に特化したMN-Core Lシリーズの活用により、ロボットをはじめとするフィジカルAI分野の研究開発が一層加速することを期待しています。
ご参考
トヨタ未来創生センターで研究しているロボットについては、トヨタ自動車株式会社の企業サイト「未来につながる研究」をご覧ください。
MN-Core™シリーズについて
MN-Coreシリーズは、AIに必要な計算の特徴である「行列演算」に最適化したプロセッサーで、PFNが神戸大学と共同開発しました。ハードウェアの演算器数を最大化するため、ネットワーク制御回路やキャッシュコントローラ、命令スケジューラなどの機能を内包せず、コンパイラにその機能を持たせて最小限の機能に特化することで、AIの計算処理における実効性能を高めています。MN-Coreを搭載して2020年に稼働したPFNのスーパーコンピュータMN-3は、2020年6月から2021年11月までに、スーパーコンピュータの省電力性能ランキングGreen500*で3度世界1位を獲得しています。第2世代のMN-Core 2を搭載したサーバーとワークステーションを2024年に発売、同年10月にMN-Core 2の計算力を利用できるクラウドサービスPreferred Computing Platform™(プリファード・コンピューティング・プラットフォーム、PFCP™)の提供を開始。現在、生成AIの推論に特化したMN-Core Lシリーズを開発中で、2027年に発売予定です。
*Green500:これからのスーパーコンピュータはエネルギー効率が最重要である、という見地から、2005年に始まったプロジェクト。バージニア工科大学の Feng 教授を中心とするグループが 2007年11月から年2回発表している。対象となるのはHPLベンチマークでTOP500 にランク入りしたシステムで、演算性能/消費電力比で順位が決まる。

